「あえて地雷を踏んでみる」かまーちょです。
2年目、3年目の研修生が空き時間を使って、弁証トレーニングをしてるようです。自主的に学ぶ姿勢は、いつみても喜ばしいことですね。彼らが質問があるといって、声をかけてきました。
「神降臨中なのはわかってますが、少しいいですか?」
「いいおー」(私には質問に答えないなどという選択枝などありませんよ)
彼ら3人の問いは、心の病位および治療方針設定についてでした。
症例:女性32歳
主訴:眩暈、肩こり
病能把握:肝脾不和からの心脾両虚
病態把握は、概ね見解の相違はないものの、気血両虚とするのか、心脾両虚とするのか、意見が分かれているようでした。
M:先生はいつも、動悸があれば心の病位を取っていいと言ってますが、この症例では、「ごくたまに動悸がある」となっているので、心まで波及しているか微妙じゃないですか?
D:わたしは、心脾両虚としました。
Y:ぼくは、気血両虚と考えました。
心脾両虚は脾気虚+心血虚なので、気血両虚でもいいですが、心に波及しているかどうかで、治療方針や配穴は異なってきますよね。
確かに、明確な動悸があれば、心に病位があると判断していいと思います。では「ごくたまに動悸がある」となるとどうでしょうか?
心の病位は、心の機能が失調していることを表すシグナルが出ているかどうかです。そのシグナルは、心の生理作用である主血と神志の異常を示すものなので、睡眠や精神の失調(神志の異常)、動悸や胸悶(主血)などがそれに当たります。その他、経穴反応なども参考にします。
睡眠の異常は、様々な病態で引き起こされるので、睡眠の異常だけでは、心の病位を決定できないことが多いですし、経穴反応だけで判断することもできません。弁証論治は、相対的に判断するものです。ですから、動悸があるから、睡眠の異常があるから、経穴の反応からなど、単一の所見では判断を下すことができません。しかし、単一の症状でも程度が強ければその病位を決定づける場合もあります。
つまり、心の病位を決定するポイントは、以下のようになります。
- 明確に動悸がある
- 強い睡眠障害がある
- 心の病位を示唆する所見が軽度でも複数存在する
- 医療機関で心の機能異常や器質的な異常を明確に指摘された。
この症例では、「ごくたまに動悸」「軽度の入眠困難、中途覚醒、多夢、浅い眠り」「心兪の陥凹無力」があります。また、主訴である眩暈の特徴は、「過労で増悪し、浮遊感を伴う」とあります。
確かに動悸の程度は軽いですが、睡眠の異常があること、経穴反応で心の異常を示す所見があること、最後に主訴である眩暈が髄海の滋養不足の可能性があることなどから、この症例は、合わせ技で心の病位はあると判断できます。
今回は、病位についての質問でしたが、病態の判断においても同様に、その基準が明確に提示されているわけではないので、判断に困ることがよくあります。症状や所見は、存在する個数で決められるわけではなく、その病態や病位を強く示唆するもの、程度の強さなど、いくつかの側面から総合的に判断することが重要になります。
だけどね、「総合的に判断することが重要」なんていわれても、なんか曖昧だし、そんなことは関係する書籍にも書いてあるし・・・ってなるよね。
なので、この「かまーちょ徒然日記」には、そこを一歩踏み込んで、かゆいとこに手が届くような解答したいわけですよ。ですから、個人的な見解が多く含まれることは、承知の上で参考にしてくださいね。
次回は、引き続きこの症例の治療方針設定について、ゴーマンかまします。
つっつく・・・・