■教えてください/なぜ、手三陽経の合穴は使われないの?
【質問】
ある講義で、「下合穴」について聞いたのですが、理解できませんでした。
「合穴」の主治症を聞いた後、すぐに「でも、募合配穴では、手の合穴を使わず、下合穴を使うのですヨ」と言われたのです。
・・・それは下合穴が六腑とのかかわりを強めるために決められた経穴だからなのか?とよくわからなくなりました。
もともと手の三陽経が六腑(大腸・三焦・小腸)とは関係のないもので、手では六腑の病を治せない、というところから下合穴が探し出されたのでしょうか?
その場で先生に質問したのですが、理解できませんでした。
ネットで調べると、このような書き込みもありました。
手の陽経と六腑は無関係である。 |
穴性学で考えても”なぜ”が答えられない部分が多いと思うのですが、私の勉強不足なだけでしょうか…
このモヤモヤを解決してください!
【答案】このモヤモヤは、角度の違ういくつかの回答があります。どれが質問者のツボに当たるのかわかりませんので、ダラダラと解説して、多くの人に一気に答案を提出してしまいたいと思います。
1.『霊枢』には「小腸合入 於巨虚下廉(下巨虚)」「大腸合入 於巨虚上廉(上巨虚)」と言う説明があります。
これは、上巨虚・下巨虚が、そもそも対応する腑に対して「病位特効穴性」とも言える穴性があったと言うことでしょう。
つまり「合穴」とはもともと、「募穴」のように、その経絡上にあるとは限らない、腑に対応したツボと言うことですね。
※ここで疑問なるのが「下巨虚で効果が出る小腸の疾患とはなに?」か、ですが…。
2.悪寒の無い発熱の場合、『傷寒論』における「陽明で熱証」のような時は、湯液も針も陽明経の熱を取り去ると言う方法が選択されます。
取穴では「滎穴(=身熱)」である「内庭(滎水)」のほか、「曲池(合土)・合谷(原穴)」が使われます。
口から肛門まで陽明腑(穀)道である、と言うざっくりした三陰三陽のパラダイムの中で、陽明経を瀉すると言う方法が取られるのです。
※しかし「 曲池 = 合穴 」が[ 二間 = 滎水穴(身熱) ]より常用される理由づけとしては、取穴しやすいからでしょうか?
あるいは「清熱」と言う[病態]に対する配穴より、「陽明」と言う[病位]の配穴が有効だから?
ともかく、曲池(合穴)は腑の病では、諸先輩方の第一選択では無いようですが、「使わない」ことはなさそうですね。
3.手の三陽経を「耳脈」「歯脈」「肩脈」と呼ぶのは、2200年ぐらい前、BC186年(前漢初期)に埋葬された《馬王堆漢墓》から出土した医書『足臂十一脈灸経』に記載がありました。
当時は現在の、12経絡が、6臓6腑と対応していたわけではなさそうです。
『霊枢』の中にもある経絡の主治症として「順経」で利用できますよ、と言うあたりのことが『霊枢・経脈篇』に書かれています。
これが、後述の、原文にある臓の経脈(手の少陰は心脈だし、手の太陰は肺脈と言える)と、手の陽経はちょっと違うので「手の陽経は六腑と関連が薄い」と言うことにつながります。
<続く>